インバウンド効果で生まれた雇用創出は約27万人、最大の効果は小売業(みずほ総研)

みずほ総合研究所は2015年の訪日旅行客による経済効果を発表した。2015年の訪日旅行客数は1974万人(2014年:1341万人)、消費総額は約3.5兆円(同:約2兆円)で、これによる経済効果は生産誘発効果が6.8兆円、付加価値誘発効果が3.8兆円、雇用創出効果は63万人と算出。このうち、2014年と比較した押し上げ効果は、生産誘発効果が2.8兆円、付加価値誘発効果が1.6兆円、雇用創出効果で26.7万人となった。

また、雇用創出効果を業種別にみると、小売業が25.9万人、宿泊・飲食サービス業が13.5万人。2015年の押し上げ効果に限ると、小売業が12.9万人、宿泊・飲食サービス業が3.9万人となった。

さらに効果が顕在化する時間差を検証したところ、1年を通じてインバウンド消費が1%増加し続けた場合、雇用に対する影響は1年強(5四半期後)をピークに拡大。その後は減退するものの、しばらくは一定のプラス効果があると見る。そのため、2015年の訪日旅行者急増による押し上げ効果は2016年にも続き、当面の雇用を下支えすると予測する。

ただし、雇用にプラス効果がもたらされても、産業全体で見た一人あたり平均賃金の抑制要因になると指摘。雇用が増加した小売業や宿泊・飲食サービス業は非正規雇用の割合が高く、他の業種よりも低賃金であるのが理由だ。雇用が堅調な一方で賃金の伸び悩みが指摘される裏には、インバウンド需要の増加があるとする。

なお、今後の持続的な雇用創出のためには、インバウンド需要の広がりに目を向ける必要があると言及。電化製品や化粧品などの「モノ」への支出から、文化や美容体験などの「コト」消費に広がりつつあるとし、潜在的な需要を顕在化させる知恵と工夫が求められているとしている。